決済系PJ(エリア通貨)における留意点~ステークホルダーについて~

Toshiki Okada/t-okada

 t-okadaです。

今回は私が過去にマネジメントをしていた決済系プロジェクトにおいて、ステークホルダーに関する留意点ををまとめてみました。

なお、既にを行なっている方であれば、役立つ部分は少ないかなと思います。

この記事を読んでもらいたい方

・現在業務でPMをやられている方

・プロジェクトで開発外注を行う可能性のあるPM

・これから開発外注を行う、もしくは検討している方

・ビジネスモデルの領域も勉強したいと思っているPM

主なステークホルダー

コイン発行事業者、加盟店事業者、加盟店、エンドユーザーなどユーザーの属性が多く、それぞれの管理ツールを用意しなければならない

  • イシュアー(issuer)
    • コイン発行体事業者を指します。主にコインを発行、管理し、加盟店のための全体売上げの清算管理を行います。また半年以上サービスを継続する場合は、前払い式支払い手段や資金移動業者の登録が必要となります。
  • マーチャント(merchant)
    • 加盟店 を指します。主にユーザーが実際に決済を行う際の店舗となります。イメージとしては、普段私たちが決済サービスを利用しているコンビニやスーパーなどです。
  • マーチャントディベロッパー、ディベロッパー(merchant developer/ developer)※ 発行体と同様になっているケースもあり
    • 加盟店事業者を指します。主にマーチャントを管理する事業者です。イメージとしては大型ショッピングモールの各店舗を束ねている企業などです。
  • コンシューマー(consumer)
    • エンドユーザーを指します。主にその決済サービスを使用するユーザーです。

基本的には各事業者の役割を明確化し、要件定義、開発のスコープを管理し、加盟店開拓を並行して管理する必要があります。

参考までにこれはクレジットカード会社がクレジットカードのシステムを導入する際のビジネススキームに少し類似しているかと思います。

参考 : アクワイアラとは?その仕組みと役割を解説

https://www.sbpayment.jp/support/ec/card_beginner/about-acquirer/

イシュアーのスケジューリング

下記が主なイシュアーの必要な決定事項となります。

・決済手数料比率の設定

・サービス提供を行うエリアの選定

 -> ex: モール内、地域エリア、通りなど

・導入する決済方法

 -> 電子スタンプなどのスタンプ決済

 -> 動的QR or 静的QR

 -> felicaなどのタッチ決済

・前払い式支払い手段や資金移動業者の登録の手続き

 -> 上記は、金融機関の大企業は、すでに登録していることが多いのですが、6ヶ月以上電子マネーサービスを実施したい場合は、前払い式支払い手段の免許の取得。

-> 出金、現金の取り扱いに関するマネーローンダリングに関わってくるため、資金移動業の取得を必要となる。

上記の観点をイシュアーは検討する必要があります。PMとしては、この辺りをどう選定するか、イシュアーと協議の上、サービスの詳細を詰めていくイメージです。

なお、今年の3月から100万円超の高額送金も資金移動業で可能となりました。

※ 下記urlを参照

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56464650W0A300C2EAF000/

今後のwithコロナの世界においては特に現金ではなく、電子マネーでの決済が相当増えるかと思います。

上記の高額送金の緩和もさらなる取引量が増えることとなり、決済だけでなく、サービス内で送金ができるというのも重要なファクターになるかと思います。

 

加盟店開拓拡大の重要性

エリア通貨のサービスを行う際に、加盟店は重要なキーファクターとなります。ある程度の規模が必要です。

この規模が少なすぎると、決済ができる範囲に直接影響します。

加盟店開拓では、以下の点を実際に加盟店になる店舗に理解をしていただかなければなりません。

・エリア通貨を導入する必要性

・エリア通貨を導入するメリット

・エリア通貨の今後の展開

加盟店にとっては上記の要素を把握した上で、導入するか判断を行うため、イシュアーは地道に加盟店開拓を行う必要があります。

またイシュアーは運営する決済サービスが最終的にどのような経済を創生していくのか?この辺りも加盟店に参加してもらい、一緒に作り上げるということに共感をしていただかなければ、サービスをグロースさせることは難しいかと思います。

コンシューマーにとってサービス登録を行うメリットとは?

ここも非常に重要な点です。

コンシューマーにとっては、今やほとんどの大手FC店舗やpaypayは静的なQRでコストを抑えて導入されているのに、あえてそのエリア通貨を使うインセンティブはどこにあるのか?

また、paypayなどのサービスはご存知の通り、インセンティブを大きく打ち出し、ユーザーの金銭的なメリットを推奨しています。

ユーザー側の心理は、

 ・決済時、初回登録時に少しでも多くの金銭的なインセンティブを得たい

に対し、イシュアー側の心理は

 ・各ステークホルダーが参加し、ローカルな経済圏を創生し、新しいお金の循環を産み出したい

といった両者に解離が生まれてしまいます。

この解離を埋めるためには、「利害関係者全てがサービスに参加することによって全体にメリットがある」ということの合意形成の促進をする必要があります。

例え加盟店の数が増え、ユーザーの登録者数が増えたとしても、サービスとしては使われなければ(取引、トランザクション量が増えなければ)価値が上がりません。

まとめ

PMとしては、上記の要素のスケジューリングとスコープ選定をするにあたって、なかなかハードなものになると思います。

また決済サービスは登録後、ユーザーに恒常的にインセンティブを与えるなどの工夫が必要となり、原資の予算の確保も重要な成功要因となります。

いずれも、日本に多くの決済サービスがある中、最終的にマネタイズまで確立させ、成功しているサービスはまだ少ないです。

プロジェクトの成功の定義は多種多様ではありますが、決済領域はビジネスモデルやステークホルダーの関わりも重要な成功要因の1つであると思います。

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この記事を書いたPM
Toshiki Okada/t-okada
@t-okada
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大学卒業後、金融機関に所属し、個人渉外を担当。その後、ブロックチェーン、DLTを提供しているITスタートアップに所属し、バックエンドエンジニアを経験後、プロジェクトマネージャーに転向。
主にDLTの技術を使用した決済のプロジェクトに従事し、複数のQR決済サービス案件を担当。現在は、別のブロックチェーンスタートアップに転向し、ブロックチェーンをベースとしたスマートコントラクト領域の案件をプロジェクトマネジャーとして担当。
金融機関 -> スタートアップ プロジェクトマネジャーなので、様々な視点で記事を発信できればと思います。